この病気は、心臓病の中でも最もありふれた不整脈であり、その存在は、紀元前から知られていました。高齢者、特に60歳から70歳を超えてくると急激に罹患率が増えてくること(全体の0.5%以上)、女性よりも男性患者が多いこと、急性脳梗塞の原因(長嶋茂雄さんが、この心房細動が原因の脳梗塞を発症したことで有名になりました:心原性脳塞栓と言います。)として大変重要であること、などが分かっています。この10年余りの医療の進歩によって、そのメカニズムが解明され、以前は経験的にジギタリスなどの薬(救心は、この薬の成分が入っています)が処方されていましたが、最近では、カテーテルアブレーションによる根治が期待できるため、一躍脚光を浴びてきました。
(薬物治療により正常脈に回復した一例)

一般には、動悸やめまいといった症状を訴えられますが、まったく症状のない患者さまもおられます。時々起こる発作性の心房細動が、徐々に発作の頻度が多くなり、また持続時間が長くなり、最終的に慢性心房細動へと移行していきます。この経過が一般には10年程度と言われています。海外や日本で行った大規模なデータから、この心房細動自体は命に関わるものではありませんが、心房が無秩序に高頻度(400~600/分)で興奮する為、血流が淀んで血の塊り(血栓)が出来やすくなります。血栓がちぎれて致死的な脳梗塞を引き起こすため、心臓内(心房内)に血栓が出来ないようにワーファリンという抗凝血薬を内服しなくてはいけないことがわかっており、ほとんどの患者さまは、このワーファリンを内服するように指導されています。その上で、動悸などの自覚症状が強い人が心房細動自体を起こしにくくする抗不整脈薬を内服し、さらに抗不整脈薬が効かない人、あるいは副作用によって飲めない人が、カテーテルアブレーションによる治療が選択されています。
(カテーテルアブレーションの様子)
最近の抗不整脈薬の進歩もすばらしく、10年前に比べると格段に治療効果が期待できる薬が使えるようになりました。又、心房細動に対するカテーテルアブレーションは現在、世界的に行われるようになり、日本でも多くの施設がアブレーション治療を行っています。しかし、アブレーションによる重篤な合併症も非常に少ないですが、報告されており、また心房細動自体が致死的ではないため(ワーファリンを飲んでさえいれば、脳梗塞に罹患する確率は同程度)、治療方針については患者さまと医師で十分に話し合いを行って、慎重にされなくてはならないと考えられます。
当院では若年者(70歳以下)ではカテーテルアブレーションによるメリットが大きいと考え、抗不整脈薬が効かないあるいは飲めない患者さまには、カテーテルアブレーションを勧めています。高齢者(70歳以上)では、基本的に薬物による治療によって症状を軽減させることを勧めています。今後、アブレーションの技術がさらに進歩したり、ワーファリンに変わる使用しやすい抗凝血薬が登場してくることが期待されます。
論文・発表(岡山大学・抜粋)
・Miyaji
K, Tada H, Fukushima Kusano K, Hashimoto T, Kaseno K, Hiramatsu S, Tadokoro K,
Naito S, Nakamura K, Oshima S, Taniguchi K, Ohe T. Efficacy and safety of the
additional bepridil treatment in patients with atrial fibrillation refractory
to class I antiarrhythmic drugs. Circ J. 2007;71(8):1250-1257.
・ 草野研吾、大江透:頻脈性不整脈2)治療a)薬物、b)アブレーションc)ICD. 臨床心臓病学。2006. 487-502
・ 草野研吾、大江透:抗不整脈薬の分類と作用機序。新目で見る循環器病シリーズ21:循環器病の薬物療法2006:156-164
・ 草野研吾、大江透:心房細動治療(薬物)ガイドライン:Jpn Circ. J 2001; 65 (suppl V): 931-998
・ 草野研吾、中村陽一、中村一文、垣下幹夫、永瀬聡、斉藤博則、松原広己、山成洋、大江透、磯村寛樹、山田雅夫:LoneAFにおける心房心筋炎の関与
・ 難波経豊、芦原貴司、藤本千草、草野研吾、池田隆徳、中沢一雄、大江 透:バスケットカテーテルを用いた心房細動における生体ヒト心内膜の興奮伝播解析法:Time shading法の開発と適用。心電図2001; 21 (2): 196-205 (Development of time shading method as a novel algorithm for
analysis of in vivo human endocardial activation sequences from basket catheter
mapping during atrial fibrillation.)
・ 難波経豊、藤本千草、天川雅夫、芦原貴司、草野研吾、大江透、池田隆徳、中沢一雄:生体ヒト心内膜における心房細動誘導時の興奮伝播様式―time shading法の概説と応用― 不整脈2001; 17: 356-362
・ 草野研吾: Diagnosis
and management of cardiac arrhythmias. 内科専門医会誌 1999;
11(3): 373-7 |