この分野の仕事は、大江教授が国立循環器病センター時代からlife workとして取り組まれてきた疾患です。不整脈の中でも稀な疾患ですが、現在でも多くの患者様が岡山大学で治療のために来院されておられます。
このQT延長症候群(Long QT syndrome: LQT)も、Brugada症候群と同様に、明らかな構造的な心疾患がない患者に‘突然死’を生じる疾患であり、心電図上のQT間隔延長、異常T波、多形性心室頻拍(Torsades
de Pointes: TdP)、失神あるいは突然死を特徴とする疾患群であります。臨床的には先天性LQTと二次性(後天性)LQTに分類され、さらに先天性LQTは、難聴を伴わず常染色体優性遺伝を示すRomano-Ward症候群と、難聴を伴い常染色体劣性遺伝を示すJervell and Lange-Nielsen症候群に分けられます。この疾患は長い間、原因不明とされてきましたが、1990年代より、これらQTを延長させる心筋のイオンチャネル(主にKチャネル)をコードしている遺伝子変異が報告されるようになり、先天性LQTの大部分、後天性LQTの一部は遺伝子解析によってイオンチャネル病として説明可能な病気となってきています。大変重要なことは、遺伝子変異を見つけ出すことにより、選択的な治療が可能になってきたことです。こうした背景を受けて、岡山大学でも積極的な遺伝子解析とそれに引き続くイオンチャネル機能解析を行い、きめ細かい治療を行っています。
岡山大学循環器内科では、最近、心臓の歩調とりを司るIfチャンネルの異常が、徐脈を伴う先天性LQTの患者様で見つかったことを、海外の論文へ発表しました。また、LQT7とされているAndersen症候群にはU波の異常が主であることを報告しました。今後も地道な研究を続けて、この先天性LQTに対する新しい治療を模索していきます。
二次性(後天性)QT延長症候群は、様々な病的な状態(薬物・徐脈・低K血症など)がKチャネルをブロックすることで二次的にQT延長が引き起こされる疾患です。多くは、心肥大や弁膜症、心筋梗塞などの基礎疾患がある症例に認められること、先天性とは異なり、遺伝子異常が認められる頻度は少ないことを我々も報告していますが、最近、我々は、膠原病患者に生じたLQTが、心筋のKチャンネルに対する自己抗体によって二次的に生じた症例を報告しました。
このように、岡山大学では様々なLQTに対する診断・治療・研究(from cell to bedside)を行っている国内では数少ない医療機関です。
(図1)If電流の異常によって生じた先天性LQT

(図2)HERGに対する自己抗体によって生じた二次性LQT

論文・総説(抜粋)
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・ 西井伸洋、中村一文、草野研吾、大江透:薬剤性QT延長症候群でみられる電気生理学的検査。心臓 2006: 38(1): 9-15
・ 草野研吾、中村一文、大江 透:後天性QT延長症候群の臨床的特徴。Jpn J Clin Pharmacol Ther 2006;
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・ 永瀬聡、柚木佳、三浦大志、吉田賢司、西井信弘、伴場主一、中村一文、斉藤博則、草野研吾、大江透:KCNJ2の遺伝子変異を認めるAndersen症候群(LQT7)における心臓電気生理学的検討。臨床心臓電気生理 2006; 29: 257-264
・ Ueda
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・ Nakamura
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S, Morita H, Miura D, Fujimoto Y, Furukawa T, Ueda
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